【連載「働く」を考える】第3部 働きやすさ求めて
◆桜山荘『共に生きる町』こはぐら
「今日は認知症について学びましょう」。介護保険サービスや障がい者福祉サービス事業を行う「桜山(おうざん)荘『共に生きる町』こはぐら」=那覇市=で開かれた研修会には職員だけでなく地域住民の姿があった。「共生ケア」を目指す同事業所では、年6回の職員研修のうち3回を地域に呼び掛け、介護の知識を一緒に学んでいる。
■ ■
「職員が、ここでなら成長できると思える職場にしたい。だから学ぶ機会を多くつくるなど人材育成に力を入れている」。事業所を統括する狩俣章部長(54)はそう話す。
介護職員処遇改善加算制度などで、事業所には研修を行うことが求められているが実施状況には濃淡がある。
桜山荘は、専門知識を学ぶ年6回の研修会のほか、運営する社会福祉法人による役職に合わせた研修会、日々の業務に必要なことを職員同士確認し合うミニ研修会などを開いている。外部の研修会にも有給で積極的に参加させている。
狩俣さんは「面接で研修制度について聞かれることも多い。向上心のある人を採りたいし、向上心を満たすための研修を充実させたい。職員のスキルが上がれば利用者へのサービスの質も高まる」と強調する。
■ ■
資格取得も後押ししている。2015年度から、国家資格を取得した契約職員を正職員に積極的に登用する取り組みを始めた。
17年度は基本給を上げるのと同時に、資格手当を増額。介護福祉士はこれまで5千円だった手当を2倍の1万円にした。
介護福祉士の試験に合格し、昨年4月に契約から正職員になった男性(52)は、ボーナスや資格手当がついて総支給額が増え、「仕事へのモチベーションが上がった」と笑顔を見せた。
資格試験を受ける職員には年休も取りやすくした。
介護労働安定センターが実施した実態調査によると、県内の介護職は離職率が2割を超え、そのうち7割以上が3年未満に辞めている。辞めた理由で最も多かったのは「自分の将来の見込みが立たなかった」だった。
一方、事業所の乱立で優秀な人材の争奪戦も激しくなっている。
人材育成に力を入れるのは、離職防止や人材確保の手だてでもあると、狩俣さんは明かす。
離職者は15年度19人、16年度8人と減り、17年度は2人にとどまっている。
新垣一成さん(24)は介護福祉士の試験を受けるため勉強中。毎週水曜日には国家試験を受ける職員同士が事業所の一室に集まり、机を並べる。
介護職でのキャリアアップを目指す新垣さんは「地域の人たちとの交流も含め、勉強する機会が多く、頑張ってみようと思える職場だと思う」と話した。(学芸部・高崎園子)